ブックタイトルスポーツ山形100号

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概要

スポーツ山形100号

スポーツ医科学情報肉離れに対する最近の知見山形県体育協会スポーツ医科学委員会委員長山形県立総合療育訓練センター所長井田英雄肉離れはスポーツをやっている、競技レベルのアスリートから一般のスポーツ者に至るまで幅広い受傷者がいる代表的スポーツ外傷である。その受傷様式、治療やスポーツ復帰までの期間などアスリートとしては知っておきたいものと思い、今回は、昨年日本臨床スポーツ医学会で、報告あったことを参考にここに述べたいと思います。従来、肉離れの診断は、問診と理学的所見を基に必要に応じてMRIを撮像して受傷が確かめられてきた。たとえばハムストリングスの肉離れであれば、ストレッチの痛みと徒手抵抗による痛みが消えればジョギングから徐々にランニングへと軽い負荷のトレーニングを行い、圧痛やパフォーマンスチェックなどの理学的所見の回復に基づいて競技への復帰を行ってきた。しかしながら復帰後に、再び同部位を受傷する例が、30から50%とかなりの頻度で再発をしている。再受傷例は、復帰することに慎重になり、1.5から2倍の時間をかけて復帰しないと再々受傷する危険性が高いといわれている。2011年IOCスポーツ外傷・疾病予防学会のハムストリングス肉離れに関するシンポジウムで、外側ハムストリングスを受傷した競技レベルの選手では半数近くが再発をしているという深刻な問題が討議されている。そこで奥脇らはMRIによる受傷のタイプ分類を行い、損傷の部位、出血また完全な筋断裂や剥離骨折の有無などによって3つのタイプに分け、治療法、復帰時期について述べている。これにより、従来言われてきた再発の発生を抑える効果があると述べている。さらにこれをハムストリングス以外の筋肉へも応用し、腓腹筋の肉離れである「テニスレッグ」にも適応が示されている。最近では、この分類に当てはまらないものもみられ、さらにタイプ分類を増やすことでその対応がよりきめ細かになってきている。しかし、スポーツ復帰の段階を進めるにあたっては、MRI所見だけでなく、患部及び全身の理学所見、運動負荷への反応など多くの情報を総合的に判断する必要がある。またスポーツ現場では怪我の診断・治療・復帰とともに予防がいうまでもなく重要であり、再受傷および復帰後の隣接筋、腱・筋膜の2次的損傷予防のために、受傷部位その他により効果的な負荷を加えるトレーニングを工夫する必要がある。最後に、ハムストリング肉離れの中等度から高度のタイプでは、股関節屈曲伸展位での伸長収縮での受傷機転が言われているので、練習前に意図的にその肢位での軽い伸長性訓練を行うことが必要のようである。スポーツでは、これまでも多くの外傷や障害が起こっています。今回はほんの一部ではありますが、本来のスポーツの意味である楽しんで体を動かすという意味からこう言った事象をできるだけ少なくするように努める必要があると思う。(日本臨床スポーツ医学会誌№3Vol.22 2014より一部引用)20スポーツ山形100